瑠哀 ~フランスにて~
「サクヤ…、ごめんなさい…。

――ごめんなさい……―――」



 なぜ、そんな風に哀しそうな顔で誤っているのだろう。

 なぜ、そんな風に苦しそうな顔で誤っているのだろう。

 瑠哀は何も悪くないのに。

 朔也は平気なのに。



「――ルイ、誤らないで――。

君は、何も悪くない

―――ああ…、なんで鎮静剤なんだ――」



 はあ、と息を吐き出した朔也は、自分の意思とは反対に、

動かなくなってきている瞼の重みに押され、眼をつぶってしまう。



「…もう、大袈裟、なんだから―――」



 まったく、と呟かれたのかどうかは分からない一言は、

薄れ行く朔也の意識と混濁して、喉元で留まったままだった。



「…サクヤ、ごめんなさい―――」



 かすれたその謝罪がそっと囁かれ、

苦しげに顔を歪めてい瑠哀が少しだけ体を前に倒し、

眠ってしまった朔也の額にそっとキスをした。



 ふと、ぼんやりと朔也が瞳を開けた。

 そして、微かに瞳を細めながら、瑠哀に向かってとても優しい微笑みをみせる。



 すぐに、スーッと、深い眠りに落ちて行ってしまった。


『……サクヤ、ごめん、なさい…―――』


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