瑠哀 ~フランスにて~
「私は観光が目的で、このフランスに来ていました。

セシルやユージンに出会ったことが偶然であるなら、

彼らに出会ったのも、偶然…なんです。

まさか、こんなにも仲良くなることができ、

そして……、

誰よりも大切な友人に変わる――なんて、

私も予想していませんでしたが」



 小さく笑んでいるのに、その微かにうつむいた顔が泣いているかのようだった。


 マーグリスは初めて聞かされる瑠哀の事情に、かなりの驚きを見せていた。



「ですから、もう期限が、切れてしまうんです。

明日――明朝には、フランスを発たなければ、なりません。

私のフライトは、明日ですから」


「―――では、それを取り替えさせましょう」

「その必要は、ありません」



 瑠哀は静かに首を振った。

 そして、顔を上げて、マーグリスをゆっくりと見返して行く。



「今夜、あなたをお訪ねしたのは、

今までお世話になったお礼と、

そして、勝手に出て行く私から、

セシルとユージンに…、そのお別れを伝えていただきたかったからなんです」


「ですが――、フォンテーヌ氏とカズキ氏は―――。

あなたは、カズキ家の大事なゲストだと聞いていますが」


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