瑠哀　～フランスにて～
　瑠哀はそこでちょっと笑った。


「そのことは――、

私を心配してくれた彼が、この屋敷に出入り禁止となってしまい、

そのように説明するしか方法がなかったんです。

嘘をついて、ごめんなさい」



　そんな風に、申し訳なさそうに素直に誤られても、マーグリスは困ってしまう。

　元々、マーグリス達の方が瑠哀に迷惑をかけた結果が、

その瑠哀を心配して追って来た霞月にそう言わさせる原因となったのだ。



「ですから、私は、もう、家に戻らなければなりません。

私の家族が、私を待っていますから。

もう、フランスにいることは、できないんです……」



　また、小さく笑う瑠哀を、マーグリスは何も言わず黙って見上げていた。



「今まで、本当にお世話になりました。

生意気なこともたくさん言ってしまい、

その上――、ケインを失ってしまいました。

いくらユージンを狙っていたとは言え、ケインはあなたの親族であり、

マーグリス氏のお姉さんには、たった一人の孫―――でしたから…。

あんな風に――撃たれてしまい、

病院に運ぶ時間もなくて…。

まだ―――助かる可能性は、あったのですが――――」



　すみません…、と瑠哀が沈痛な面持ちでそれを口に出した。

　マーグリスはただ首を振り、瑠哀を見上げて行く。


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