瑠哀 ~フランスにて~
「あなたのせいではありません。

あれは、自業自得でしょう。

姉には悪いが、今となっては、私はホッとしています。

あれは、昔から素行が悪い。

人まで殺めるなど、とても許しておける者ではありません。

生きて――あのまま、助かったとしても、刑務所に入り、

その後もマーグリス一族に近づくことは許しません。

ですから、ユージンも安全となった今、

冷たいことを言いますが、ケインがいなくなり、ホッとしています」



 それは冷たい言葉だったが、それを話しているマーグリスは、冷淡な感じがしなかった。

 マーグリスも、自分なりに今回の事件を見つめ直すことがあったのかもしれない。



 親戚であって、養子候補にまでなっていたケインの素性を全く知らず、

そんなケインが自分の跡を継ぐことを考え、

そして、新たに自分の身内となったユージンの将来をも考えて、

今の状態がたぶん最善なのだろう、

とそんな結論を出していたのかもしれなかった。



「そして、あなたには、私からも、本当に感謝しています。

あなたがここにいて、私に――そして、私達にしてくださったことを考えれば、

私は本当にお礼の言いようがありません」


「お礼など、言わないでください。

私は、ユージンが幸せになれて、とても嬉しく思っています。

ユージンは、本当にかわいい男の子ですから」

「そうですね」


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