瑠哀 ~フランスにて~
 マーグリスも、ふっと、笑んでいた。

 ――すぐに、その顔を曇らせ、瑠哀をもう一度見上げる。



「飛行機が、明日なのですね」

「はい」

「――別の便に変えることは、できますが」

「その必要は、ありません。

これ以上の迷惑など、かけられませんから」


「迷惑などであるはずもありません。

あなたには、感謝しています。

本当に、全てあなたのおかげでしょう。

怪我もなさっているし、まだ戻ってきたばかりで無理をするのは、

体にも負担がかかるでしょう。

ですから、明日の朝ここを発ち、昼過ぎの便で帰国できるよう手配しましょう。

それなら、お二人にも挨拶ができると思います」


「ありがとうございます。

そのご好意は嬉しいのですが―――、それでも、

私がフライトの便をずらしてまで帰国すると、

私に何かあったのでは、と家族も心配し出してしまうと、思うんです。

フランスには―――もう、三ヵ月近く滞在しているんです」

「そんなに?―――それは、知りませんでした」

「そうですね。

ですから、私は、もう、帰らなければなりません。

私を待っている家族が心配していますので」

「そうですか……」

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