瑠哀 ~フランスにて~
「本当に、あなたには感謝しています。

また、フランスに来る機会があれば、いつでもここに寄って下さい。

ユージンも喜ぶことでしょう」

「ありがとうございます。

あなたも――皆さんも、お体に気をつけて」

「ありがとうございます」

「本当に、お世話になりました」



 瑠哀が最後にきちんと挨拶を済まし、スッと、少しを頭を下げた。

 静かに顔を上げて行く瑠哀を見やりながら、マーグリスがもう一度口を出す。



「お二人に、なにか伝えることはありませんか?」



 顔を上げた瑠哀が、ほんの少し考え込む。



「私でできることなら、お二人にも伝えておきますが」

「…あの―――」

「あなたには、本当に感謝しています。

そして、あのお二人にも。

滅多なことで、一人の女性を心配して、他人の屋敷まで追ってくることなど、

きっとありませんよ。

あなたは、お二人にとっても、とても大切な女性であるのですね」

「私は……」


「私は、あなた程彼らのことを存じているのではありませんが、

それでも、年のとった老人の言うことは、当たっていることが多い。

無駄に、年をとっているのではありませんから」

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