瑠哀 ~フランスにて~
EPILOGUE
 ―――もうすぐ、彼女と出会ってから二年目の夏が来る。



 あの時から、ずっと、後ろを振り返る癖がついた。

 通り過ぎて行く少女に、考えもせずに顔を回。



 ふわっと、自分の横をかすめていく長い髪に、ハッとして、また後ろを振り返る。

 あれから、何度の繰り返しだろうか。



 何万回、繰り返された動作だろうか。

 これから、あと何千回繰り返せば、無残にも視界から消えて行くあの残像が、現実となるのだろう。



――――ルイ……。



 あの大きな漆黒の瞳が、哀しそうに、自分を見詰めている。

 泣いているのではないだろう。

 なのに、こんなにも胸が締め付けられる。

 その泣かない涙が苦しくて、思いっきり自分の腕に抱き締めてしまいたい。



―――サクヤ…。


 自分の名を呼び、優しく自分に微笑みかける笑顔。


――――サクヤ、ありがとう。本当に、ありがとう…―――


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