瑠哀 ~フランスにて~
「―――今、どこに………」



 胸が締めつけられる。焼き焦がれるほどのこの自分の熱さを、

どこに持って行けばいいのだろう。



 この上なく優しくて、胸がしめつけられた。その激しさが、自分を熱くさせた。


 こんなに好きになるだなんて、思ってもいなかった。



――――サクヤ…。



 あの哀しそうな微笑みを見るたび、抱き締めて二度と離したくなる。


 なぜ、一人で行かせてしまったのだろうか。

 なぜ、気付きもせずに、ただ時だけが過ぎて行ってしまったのだろうか。

 あまりに何もかもがアッと言う間に過ぎ去って行き、傍で抱き締めたあの儚げな姿が

―――もう、自分のものとなっていたのだ。



 腕を伸ばせば、いつでも届く位置に――――


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