瑠哀 ~フランスにて~
 ―――突然、閉じた目の上に影が差し、瑠哀は反射的に目を開けた。


 目の前に男が三人立っていて、瑠哀を取り囲んでいる。


「あの女と息子は、今どこにいる?」


 真ん中の男が早口のフランス語で問い詰めてきた。


 スッと、その視線を素早く動かし、一瞬のうちに、瑠哀は男たちの存在を認め、表情も変えず、


「知らないわ」

「知らないはずがないだろう。一体、どこにいるんだ。答えろっ!!」


 グイッと、その男が瑠哀の肩を掴み上げるようにした。


 瑠哀は明らかに嫌悪をその瞳に浮かべ、パチンッ、と男の手を払いのけた。

 冷たい、軽蔑も露な顔で、静かに前の男を睨み返す。



「知らない、と言ったはずよ。聞こえなかったの?」

「隠しても、なんのためにもならないぜ。

痛い目にあう前に、さっさと答えた方が身の為じゃないのか?」


 男は瑠哀に払われた手をさすりながら、後ろの男に目線で頷いた。


 後ろの男が頷いて、ズボンのポケットに手を伸ばしかけ―――


「うわっ―――!!」

「俺の連れに、何か用かな。

こんな真昼間から、か弱い女性を取り囲むとはいただけないな。

用件は、俺が聞こう」


 瑠哀は驚いて、咄嗟に顔を上げた。
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