瑠哀 ~フランスにて~
 いくら朔也が休み中だと言っても、瑠哀一人のせいで、その貴重な休みを台無しにしていると思うと、朔也に申し訳なくて仕方が無かった。


「もう……大丈夫、だと思うし」



 ここ二~三日、尾行されている気配が無かった。

 朔也が一緒にいるせいかもしれなかったが、瑠哀があの親子と接触する様子がないので、諦めたのかもしれなかった。



「ふうん。――君は、本当に謙虚だね。

もう少し我が侭を言って、自分の欲しいものを要求すべきだね」

「私は、今のままでも十分我が侭だと思っているけど」

「では、せっかくできた友人を、その旅行に誘おうとは考えていなかったわけだ」

「え……?」



 思わず足を止めて、ピエールを見上げた。

 ピエールは眼だけを瑠哀に向けて、拗ねたような顔をしている。



「みんなで旅行に行けたらもっと楽しいでしょうけれど……。でも―――」

「ルイ、我が侭と言うのは、他人の意向を無視して自分の我を通すことに意義があるんだよ」



 ピエールは冷たい眼を向けていて、瑠哀の反応を見ている。

 せっかくできた友人ともう少し一緒にいたいのは山々なのだが、ピエールだって、朔也だって、予定はあるはずなのだ。



「ピエールも我が侭だから」


 朔也が振り返って、肩をすくめるようにした。


 ピエールはちらりと朔也に目線を向け、またすぐに、瑠哀を冷ややかに見下ろす。
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