瑠哀 ~フランスにて~
―――言っても、いいのだろうか………。


 ピエールは、言え、と言っているように見える。

 我が侭と言っても、つい、迷惑ではないかと思う方が先立ってしまう。

 どうしようか………



「―――ピエール、一緒に旅行に行かない?」

「行かない?」

「……一緒に、行きましょう。

一人で旅するのもいいけれど、あなた達と一緒に行けたら、もっと楽しいわ。

せっかく知り合えたのに、ここでお別れするのは嫌だわ」

「良くできました」


 ピエールが、ふっと、口元を緩めたのを見て、瑠哀はなんとも言えない表情をしてみせた。


「ああ、そんな顔しないで。

君は人のことを気にし過ぎだよ。

一体、僕の何が引っ掛かるんだ?」

「ピエールの仕事」

「そんなもの、大したことはないよ。他には?」


 瑠哀は答えず、前を行く朔也に視線を投げる。


「サーヤ?彼は、大丈夫だよ。暇だから」

「ピエール、その、暇だから、と言うのは、どうもね……」


 朔也が苦笑いして、顔をしかめてみせた。


「それは、失礼。

彼は、今、休み中だから、心配する必要はないよ。

―――これで、いいかな?」

「ねえ――。無理にとは言いたくないの。なんだか、気が重いから……」


 瑠哀は心底困ったようにピエールを見上げている。


 ピエールは朔也を責めるような視線を投げた。
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