瑠哀 ~フランスにて~
 軽やかに階段を下り、ピエールか朔也を探す。

 どうやら、まだ部屋にいるようなので、ちょうど歩いて来た執事の人に声をかけた。



「すみません。ピエールに、私が散歩に出かけた、と伝えてくれませんか?」

「かしこまりました。お気をつけて」

「あそこから、外に出られます?」


 オープンな居間らしき部屋に、ビーチに続くドアが見え、瑠哀はそれを指した。


 執事が頷き、


「ええ。そのまま下りて行かれますと、プライベートビーチに着きます。

左手の入り江と、右手の方にヨット乗り場が見えますが、

そこまでがプライベートビーチとなっております」


 ありがとう、と礼を言い、ドアを開けて外に出た。


 緩い傾斜の砂浜を降りながら、靴が邪魔になり、思い切って脱いだ。暖まった砂の感触が、素足に心地良かった。


 青く広い海を前に泳ぎたくなってしまったが、とりあえず、足だけを水に浸している。


『フランスで、海にくる時があるとは思わなかったわ。

日に焼けちゃうわね。

朝方に泳いだ方が、いいかしら……』



 そう呟きながら、ふと顔を上げると、右手の方にボート乗り場が見える。

 ここから、100mもないだろう。



―――誰か、いる。



 子供だろうか……。ボートをまたぎ飛ぶようにして、遊んでいる。


『危ないなぁ』
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