瑠哀 ~フランスにて~
「これをお話しすべきかどうか、ずっと迷っていたんです。

あなた達と別れた後、伝えなければならないことがあって、あなたを探していました。

でも――、見つけられず、私もパリを発つことになって、

それも仕方がないかもしれない、と思っていました」


 瑠哀は自嘲気味に笑む。


「今日、ユージンに出会わなければ、このことを思い出さなかったと思います。

―――あなた達は、狙われているでしょう?」


 母親は目を大きくして、瑠哀を見返した。


「あの男達が、あなた達の居場所を聞きに、私の所に来ました。

でも、私はどこにいるかなど知らなかったので、答えることができません。

その後、私は見張られていたようなのです。

あなた達と連絡を取るのではないか、と疑っていたのでしょうね」


「…いま、は……?」


「パリを発つ前には、その気配はありませんでした。

なにもしない私を諦めたのだと思います」


 母親は、ほう、と安殿溜め息をもらす。
< 53 / 350 >

この作品をシェア

pagetop