瑠哀 ~フランスにて~

-4-

「すごい、おおきなおうちだねぇ。

お兄ちゃんたちが、すんでるんでしょう?」


 ユージンと呼ばれる子供が朔也の前を駆けながら、クルリと振り返る。


「ここは、俺のじゃなくて、この隣のお兄ちゃんのお家なんだよ」



 ユージンはピエールを見上げるが、その無表情な顔を見て、パッと下を向く。

 朔也はピエールのその顔を見て小さく息をつき、ユージンお頭を撫でた。



「それより、ユージンはルイの知り合いなの?」

「うん、そうだよ。

ぼくは、パリにすんでいるんだ。

ルーイにあったのも、そこだよ。

お兄ちゃん、パリってしってる?」


 ユージンは朔也達がパリから来たことを知らないのだろう。


 朔也はそれに笑って、


「知ってるよ。

この国の首都だろう?

お兄ちゃん達もそこから来たんだ」

「ほんとう?じゃあ、ルーイはお兄ちゃんたちに、あいにきたの?」

「そうじゃないけど。

でも、ルイはお兄ちゃん達の友達だよ」

「ともだち?

ふうん。じゃあ、お兄ちゃんたちは、いい人だね。

ルーイのともだちだったら、いい人にきまってるもん」

「どうして?ルイの友達じゃなくても、いい人はたくさんいるよ」

「ルーイは、とくべつだよ。

ぼくをたすけてくれたもん。

きょうだって、うみにとびこんで、ぼくをたすけてくれたしね。

いっつも、ルーイは、ぼくをたすけてくれるんだ。

カッコイイんだよ」

「海で何かあったの?」

「ぼくね、ボートにジャンプしてあそんでたら、うみにおっこちちゃったの。

ぼくおよげないから、おぼれそうになって………。

そしたら、ルーイがたすけてくれたの。

ここにいる、っておもってなかったから、すごい、びっくりしたんだよ」


 ユージンは目をクリクリさせて、その時の様子を語る。


 朔也は、それでか、と納得しながら、ユージンを覗きこむようにした。
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