瑠哀 ~フランスにて~
「君の言っていることは判る。

だた、俺は傷つくことがあっても、自分の身と君の安全を守ることはできる、と思っている。

誰かを守ると決めた以上、傷を受けるのは覚悟の上だ」

「では、私はその覚悟を受けとめることができない、と言うわ。

私の為に、誰かが苦しんだり傷ついたりするという責任の重さを、

私は支えることができないから。

私は無力だわ。

無力の人間が誰かに守られていることは、その人のお荷物になるのと一緒。

それを判っていて、むざむざ誰かに守られることは、

その人に、私のために命を捨ててください、と言っている気がするの。

こう考えている私を、誰かが守れるとは思えない」



 朔也は呆然とした顔をしていた。

 朔也が今まで生きてきた中で、こんなことを言った女の子は、瑠哀が初めてだろう。



 拒絶は歴然としたように聞こえた。



 女性は弱いものだ、と聞かされてきたせいか、彼らを守るのは当然のことだと思っていた。

 それが、今は、頭から水をかけられたようにさえ感じる。



「……ありがとう、心配してくれて。

時々、素直でかわいい女になれたらいいな、と思うけれど、私の性格じゃ無理だと思うの。

だから、私を守ろうだなんて、考えないで。

あなたを傷つけたら、こんなに親切にしてもらっているのに、

情けなくて顔を合わせられないわ」
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