瑠哀 ~フランスにて~
「―――昔の人は、月があまりにきれいだから、せつなくて胸が締めつけれて涙したんだって。

以前、読んだ本でこのことを言っていたんだけど、

『月は黄色と言える。この黄色は暖色で、人をほっとさせる力がある。

故に、そのほっとする雰囲気で、今まで胸に押し込めていたものが出され、悲しい気分になり涙した。

大抵、月を見上げる時は考える時間がたくさんあり、そういう時、人間は色々と過去のものごとを考えがちである。

月が悲しいのではなく、物思いに耽る自分の過去などがせつなくて泣くのである』

―――て言っていたの。

これ、どう思う?」

「センチメンタルだね。

僕はそういった感情は持ち合わせていないから、

たかが月を見て泣くのがどうしたと追究する気もない。

それに、月が黄色く見えるのは、太陽の光を反射しているから、

太陽系にある惑星はそう見えるだけだ」

「なるほどね。とても簡潔だわ。

私もそうセンチな女じゃないけど、そういうことを考えるのは面白いと思うわ。

月は地球の衛星、添え星よね。

だったら、地球の影響を大きく受けているのかもしれないわ。

この蒼い惑星は、太陽系の中でも一際強く輝いている。

その輝きを、月にいたと言われている伝説の神々が恋焦がれていた」



 瑠哀の白い横顔が月の光に照らせれて、きらきらと浮かび上がっている。

 周りの夜の暗さよりも、瑠哀の瞳の漆黒さのほうが深く澄んだ色をしていた。



「他の惑星から見れば、月は地球の光りを反射して、月の砂面は蒼く光っているのかもしれないわ。

そう考えると、おもしろくない?」
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