瑠哀 ~フランスにて~

-2-

「ユージンっ!!」



 男だろうか。ユージンを抱えるように走り去って行く。

 人込みから離れて行くように暗がりへ走っている。



 行き交う人々にぶつかりながら瑠哀はユージンを追う。

 このまま行ったら林に近づき、民家の光りが届かなくなる。



「ユージン!!」



 さっきから間断なくユージンを呼んでいるのに応答がない。

 気絶しているのかもしれなかった。



 少しきつい坂を駆け上って行く。

 相手はユージンを抱えているので、瑠哀が追いつくことは容易かった。

 あと数歩でユージンに届く。



 男はそれに気付いたのか、足を止めた。



「ユージンを離しなさい。

なんの目的があるのかは知らないけど、こんなやり方は許さない。

ユージンを返して」



 あっちの騒ぎに光りを盗られて、ここは暗い。

 背中を向けていたが、相手は黒いサングラスを掛けているのがわかる。



「…………ママン?」

「ユージン!」

「ママンっ!!ママン、助けてっ!」


 気がついたユージンが狂ったように叫び出した。
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