瑠哀 ~フランスにて~
『俺はあっちに戻る。

警察も来ているはずだから、事情聴取の時に彼女の側についていたほうがいいだろう』

『わかったわ。ユージンのことも、言うの?』

『いいや。

誰が何の為にしているのかも判らない俺達が警察に話しても、

この被害に関係していると疑われるだけだろう。

証拠もない』

『そうね…。―――サクヤ、気をつけて』



 頷いて走り去って行く朔也を見送って、瑠哀は家に入って行く。


 ピエールが迎えに来てくれていて、瑠哀の髪を撫で軽く額にキスをした。


「ご苦労だったね。彼は?」

「大丈夫よ。

ちょっとショックを受けているから、私の部屋で休ませるわ」

「代わろうか?」


 瑠哀に抱きかかえられているユージンを見てピエールは手を上げたが、瑠哀は少し顔をしかめて首を振る。


 ピエールは、わかった、というふうに頷き、瑠哀と一緒に歩き出した。


「向こうは、かなりひどい騒ぎになってるようだ。

僕が警察を呼んだ後、消防車もかなりの台数が呼ばれていた」

「ガードを数人送った、とサクヤが言っていたけれど」

「ああ。サーヤから連絡がきて、彼女の家が半分焼けてその処置をしている、と。

子供もいなくなったから探す間、彼女のガードが必要だと、ね」


 あれだけの混沌した中、よくこれだけ的確に指示できたものだ、と瑠哀は感嘆した。



 ピエールが空けてくれたドアを通り過ぎ、部屋の中に入って行く。

 ピエールに二人だけにして欲しい、と頼み、そのドアが閉められるのを待った。



 ゆっくりとユージンをベッドに寝かせる。その髪を何度も優しく撫でながら、ユージンに声をかけて行く。
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