瑠哀 ~フランスにて~

-3-

「奴らは本気だな。

あれだけの騒ぎを起こすのには、それなりの準備と時間を要する。

ここずっと静かだと思ったのは、これを用意するためだったんだな」

「まったく、よくやってくれたよ。

まだ、警察と消防が昨日の処理にあたっているんだろう?

ここら一体は、大損害だ」

「目的はなにかしら?ユージンだと言うのは判るけれど、ここまでしなくてはならない?」

「それが問題だな。

マーグリスの会長が、こんな迷惑なことをするとは考えられない。

彼が常識を忘れて狂ってしまった、と言うのなら、話は別だが。

やはり、一度、直で彼と会って話をすべきだな」

「私もそう思うわ。

ここであれこれ気を揉んでいても、話にならないもの。

不明な点が多すぎて、解決の仕様がないわ」

「彼女は?」

「まだ、休んでいるわ。

ピエールにもらった精神安定剤が効いて、良く眠っているから」

「彼女にもこのことを話さなければならないな。

昨日のショックで、かなりまいっているようだったが――」



 昨日、と言うか、今朝方なのだが、朔也が戻って来たのは朝の三時過ぎだった。

 その前に、セシルに簡単な荷造りをさせてピエールの家に越させたのが、それより約一時間前。



 朔也は、ユージンの家の半分が焼失したので、それの事情聴取を引き受けていた。



 警察とも話をしたらしく、その焼け方から見て、花火の飛び火ではなく放火の疑いが強い、と言う。

 それを聞いたセシルは血の気を失って倒れそうになった。

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