瑠哀 ~フランスにて~
「僕はね、一人でそんなものに参加するつもりはないよ。

人助けをするつもりもない。

君が彼らをかばっているから気にしているだけで、他に理由はない。

親切心を持ち合わせているとも思わないで欲しい」

「私が参加すると言ったら、ピエールも来てくれるの?」

「そうだよ。そうしたら、サーヤも来れる」

「私がお願いしても、行ってはくれない?」

「行かないね」


 パーティーか………。

 そう言うものは、敢えて避けたかったのだが、瑠哀が出席しないとピエールを動かすことはできない。

 今の状態では、それがマーグリス氏に会う限られた手段だ。



「……それって、やっぱり、正装するやつなんでしょう?」

「別に、そのままの格好で行っても、僕は気にしないよ」


 ―――と言っても、そう言うわけにはいかないだろう………。


 瑠哀は渋面を見せて考え込む。


――――困った………。


「ドレスを持っていないの?それなら、買ってあげようか」

「……持って、ないことも、ないけど―――」

「けど、なに?ルイはパーティーに参加するの。それとも、しないの?」


 ピエールは、どこまでも淡々と瑠哀をせっつくように問い返してくる。


 うーん…、聞こえぬ唸りを上げて、まだ眉を寄せながら瑠哀はそのピエールを見返していたが、仕方なさそうにため息をついて、


「……行くわ、それにね。だから、ピエールも来てくれるでしょう?」

「決まりだね」


 ピエールはにこりと笑んだ。


―――パーティー……?まいったわ……。


 瑠哀は聞こえるか聞こえないくらいの小さな溜め息をこぼしていた。
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