瑠哀 ~フランスにて~
「そんなに――そこまで、ひどかったなんて…!?

――いや、ひどいはずだ。

一週間以上経った今でも、それだけ黒くあざが残っているのだから、

かなり激しく打った証拠だろう。

ルイ、なぜ、こんな大事なことを言わなかったんだ?」

「言えるわけが、ないでしょう。

私は昨日階段から落ちて、脳震盪を起こしていました――だなんて。

私が狙われていたわけじゃないもの。

警察だって動くことはできないわ。

だから、何とも言えない、と言ったのよ…」

「なるほど――。それじゃあ、その傷はなんだ?

昨日の夜にやられたのか?」

「ユージンを追っている時にね。

ボーガンで撃たれたの」

「ボーガン――?!」


 朔也とピエールの二人が、思いっきり顔をしかめるようにした。


「そうすると、君は、今度は間違いなく殺されかけたんだな」

「これも、私じゃないわ」


 なに?―――というふうに、朔也が眉をひそめた。


「ずっと、心に引っ掛かっていたことがあるの。

彼らの目的は、ユージンよね。

昨日の件で、はっきりとしたわ。

私は…最初、セシルとユージンの両方だと思っていたの。

でも、ユージンだけだった。

ずっと――、私は思っていたことがあって――。

彼らを尾け回しているだけにしては、手荒で残酷だ、とずっと感じていたの。

昨日、殺されかけたけれど、それは私じゃなくてセシルを殺そうとしたのだと判る」

「なぜ、彼女を殺す必要が?」
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