瑠哀 ~フランスにて~
「先程、あなたがダンスをなさっているのを、拝見致しました。

一輪の華麗な花が咲いているようで、つい、魅とれていたのですよ。

―――私も、一曲お願いしたいのですが?」

「以前にもお話ししましたが、私は踊れないんです」

「踊れないようには見えませんでしたが?」


 瑠哀は冷淡な色の眼を向ける。


「わかっています。

次は、踊らない、と言うのしょう?

彼らは特別なのかな?」

「答えなければなりませんか?」


 かなり高飛車な態度だった。


 男はまだにこやかに笑んで、


「あなたは、本当に美しい。

その笑わない氷のような瞳が、男を熱くするのをご存知ですか?

その氷の瞳を溶かしてみたくなるんです。

バラには刺があると知っていながら、それに触れずにはいられないのと同じで。

あなたを諦めるには、あなたは美しすぎる。

以前、私が言ったことを覚えておいでですか?私は、今でも本気ですよ」


 冷たいほどの無表情で,瑠哀は男を見ていた。


 男は、ふっと、笑む。


「その話は、また今度にでもしましょう。

私はそろそろ失礼しなければならないので。

今日は、商用でこのパーティーに来ているものですから」



 商用、と聞いて、瑠哀は一つのことを思い付いた。

 色々と手広く事業をしているこの男なら、知っているかもしれない。

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