森の人
第四章 街の人
散りゆく桜が生徒達を迎える校門。

中庭に咲く色とりどりの花達が、優しい甘い香りを風に乗せ、校舎を包んでいる。

「今日はみんなに、転校生を紹介する」

入学式も、クラス替えも終え、落ち着きつつある、南山高校。

朝のホームルーム。

ざわつく生徒達を席に着かせ、2年5組の担任、大西昌彦が言った。

「マジ?」
「男?女?」
「イケ面かな?」
「どんな人だろう」

好き好きに妄想を膨らませ、盛り上がる生徒達。

「静かに」
「では、入ってきなさい」

ガラガラ…。

大西の紹介に合わせ、転校生が教室に入ってきた。
そして、教壇に立ち、軽く一礼をすると、挨拶を始めた。

「今日からここで勉強することになりました。澤山茂樹です。よろしくお願いします」

緊張した面持ちの澤山に、みんなの視線が集中する。

「みんな、仲良くするように」

「…」

潮が引くように下がる、クラスのテンション。

どうやら、澤山は、2年5組の「理想の人」ではなかったようだ。
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