あなたの言葉 ~短編~
まさかの一言。
あなたの好きな人は私?
これは夢?
ドッキリ?
騙されてる?
「ずっと前から好きだった、話しかけれないほど紗奈のことが。」
そう言って私の目を真剣な表情で見つめてくるあなた。
その目は、まるで嘘を言っているようには見えません。
「ほん……と?」
「本当だ。だから、さっき紗奈から好きな奴いるってきいて、どうしようもなくそいつに嫉妬した。どこの誰かもしらねぇのに……はっ、俺かっこ悪…。」
頭を抱えるあなたを見て、私はとてもうれしくなりました。
あなたが私と同じことを考えていて、私のことを好きだと言ってくれた。
こんなにうれしいことは今まで生きてきた中でありませんでした。
「……っで、お前は誰なんだ?」
えっ?
あなたは、私の腕をつかんで顔を寄せた。
「お前の好きな奴は誰だ?お前が教えてくれたら俺はお前を諦める。それで、お前がそいつのこと本気で好きなら、なら俺はお前の幸せを願うよ。」
この人はどこまで優しいのだろう。
この人は自分が傷ついても人の幸せを願うことができる。
そんなところが、私は大好きなんです。
「なぁ、誰なんだ?」
あなたは、とても不安そうな目で私を見つめ、よりいっそう顔を近づけてきた。
「わ、私の好きな人は…──」
両想いなら、少しくらいならいいでしょうか……。
「私の好きな人はね………」
──チュッ……
「えっ?」
「──薫だよ。」
可愛らしいリップ音の後に私の声が誰もいないこの小さな公園内に響いた。