【短】キャンバス
今日の部活も二人きりだった。
美術部の部員は3人しかいない。
私と彼と――部長である、男の子の3人だけ。
部長は生徒会にも入っていて、中々部活に来れない。
だから、私は彼との二人きりの空間がとても幸せだった。
彼にとってはどうでもいいことでも、私にとってはとても【宝物】だった。
私は絵の具を片付けていた。
窓から見える夕日が沈みかけていた。
ちらりと彼を見る。
彼はキャンバスを睨むように真っ直ぐ見ている。
「北結くん…まだ片付けないの?」
静かに声をかけると、彼の首がこくりと縦に振る。
「もう少しで…出来るんだ。ごめん、もうちょっと待っててくれる?」
「うん、ゆっくりでいいよ。片付けてるから」
これが日常の会話
だけど、初めて出会った時より確実に近づいていっている。