【短】キャンバス



私は彼の周りにあった道具を静かに運ぶ。
廊下にある水道で冷たい水を手に浴びながら、洗っていた。



「都築(つづき)さん」



と、名前を呼ばれ振り返った。
その先には部活の部長が立っていた。



「部長、お疲れ様です。今日も生徒会の仕事だったんですか?」



「まぁ…そうです。部活に行けなくてすみません」



部長は絵に書いたような真面目な人だった。
プラッチック製の黒縁メガネを掛け、制服をきちっと着こなす。



でも…私は知っている。
それは周りにそういうふうに印象づけるためだと。



本当は子供のようで、だけどとても優しく温かい人
頼りがいがあって、他人のことを考えられる人




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