【短】キャンバス



その日は夏休みの部活で、珍しく部長もいた。
3人で部活をするのは久しぶりで、小話に花が咲いた。



そんな時だった。
部長が彼に聞いたのだ。



「北結くん、フランスに行くって本当?」



そんなの初耳で私は驚いて彼を見た。
彼は否定することなく、真面目な顔をして頷いた。



「北結くん…留学するの…?いつ…?」



気づかないうちに声が震えていた。



彼は持っていた筆を置く。
真っ直ぐ私たちの目を見る。



「夏休み中に行くつもり。もっと…絵の勉強をしたいんだ」



それを聞いた瞬間、冗談じゃないんだって思った。
そう思った瞬間、涙がでそうになって…



私は美術室を飛び出していた。



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