チョコレート記念日【2023ver.】


心配そうに私に駆け寄る紅葉くんの頭を軽く撫でた。


「大丈夫…ちょっとバランス崩しただけだから、紅葉くんはケガしてないよね?」


「う、うん…ぼくは大丈夫…」


顔面蒼白の紅葉くんに向かって私はニコリと笑を浮かべるとゆっくり立ち上がる。


「な、なんだよ…ちょっと押しただけなのに大げさなんだよ…!俺は悪くねーし」


中学生もまさか私がここまで派手に転ぶと思っていなかったようで、慌てたように言い訳を口にしていた。


「…あのさ、さすがに暴力はよくないんじゃない?しかも言い訳して恥ずかしくないの?」


そう呟いて、私は努めて冷静に声をかける。


けど、どうやらその言葉掛けは火に油を注ぐ結果になってしまったようだ。


「…っうるさい!そっちが勝手に転んだんだろ」


そう言って、中学生は怒りにまかせて今度はバッと手を振り上げた。


…嘘でしょ!?


「殴られる」そう思って私は反射的に、ギュッと目を瞑ってしまう。

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