腐れ縁からくる安心感って罠だと思う。
「しかし変わるもんだな。彼氏でも出来たのか?」
あ、
その顔は絶対いないと思ってる。
ニヤニヤしている須田をにらみながら綾は言った。
「出来たよ。」
「…ぇえ?!マジかよ!」
「もう一週間。」
「どこで出会ったんだよ!」
「…。」
「…綾?」
まさかネットで、とは言えない。
「どこらへんに住んでんだ?」
「…。」
まさか北九州で、まだ一回も会ってないなんて、言えない。
綾は須田を背にしてゴロンと横になる。
「…どんなやつなんだよ、そいつ。」
「……すんごい優しくて、愚痴も聞いてくれて、…えっと、とにかくすんごい優しい!」
「…ふーーん。」
背中に響く奴の声が、
pululululu…
「…あ、もしもし?拓也か?」
やけに苛立っていて。
「お前今日戻って来なくて良いから。」
ブツッ
………は?
背中に感じるのは焦りと恐怖と
「お前、生意気。」
やたらと熱を帯びた指先と。
【Fin】