極上御曹司のイジワルな溺愛
その前にお風呂場で私の裸を見たから、欲情したとか?
蒼甫先輩も三十歳の大人。まさか童貞のはずもないし、私の裸を見たくらいでそれはないか。
今のところ、突然沸き起こった恋心は私の一方通行。なんとなく気持ちの輪郭ははっきりしてきたものの、中身が埋まりきっていない。
「……椛。椛! おい、聞いてるのか?」
「え? はい。何でしたっけ?」
自分の世界に入りきっていた私は蒼甫先輩の話をひとつも聞いておらず、我に返ると慌てて聞き返す。
「何ボーッとしてるんだよ。兄貴も、ここで暮らすってさ」
「へぇ~そうなんですね……って薫さんも!? 本当ですか?」
蒼甫先輩とふたりも心配なのに、その上薫さんも一緒なんて。
家というものは、仕事や一日の疲れを癒やす大事な場所。それなのにこの兄弟がいては……。
蒼甫先輩と薫さんを交互に見ると、先行き不安な私は大きな溜息をつく。