極上御曹司のイジワルな溺愛
「椛ちゃん。その顔は、僕が一緒なのが嫌なのかな?」
薫さんが、淋しげな目で私を見つめる。
一緒が嫌だと思ったわけじゃない。けれど私が、そう思わすような顔をしてしまったんだろう。
それにここは、蒼甫先輩と薫さんが生まれ育った家。そこに住まわせてもらうことになった私が、文句を言える立場にない。
「そ、そんな嫌なんて、全然思ってないですから! どっちかと言えば歓迎? かなぁ」
一人より二人。二人より三人。
それに蒼甫先輩のことが好きと自覚? してしまった今となっては、薫さんがいてくれたほうが都合がいいいかも。
薫さんに笑顔を見せると、彼の表情が一瞬でパッと明るくなる。
「歓迎? ホントに? 嬉しいなぁ。椛ちゃん、今日からよろしくね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
またしても両手を広げる薫さん。もうこうなったら仕方ないかと思った矢先、強烈な視線を感じて目線を動かす。
蒼甫先輩がジロッと睨んでいるから、薫さんに応えるのをやめて右手を差し出した。