極上御曹司のイジワルな溺愛
「わお! 今晩から椛ちゃんの手料理が食べられるなんて、僕はなんて幸せ者なんだ」
薫さんはそう言って大喜びだが、私はひとりうなだれる。
「兄貴、それ大袈裟。言っとくけど椛は料理できないから、俺の助手だ」
「そんなこと、どうでもいい。椛ちゃんがキッチンに立つことに意味があるんだよ。ねえ、椛ちゃん」
「ねえ」と言われて苦笑する私に、薫さんが優しく微笑み返してくれる。
薫さんは、本当に良い人だ。屈託のない笑顔を見ていると、少しだけ心が癒やされる。
それに引き換え、蒼甫先輩は……。
私と薫さんのやり取りを見て、くだらないとでも言いたげな顔をしている。
なんとなく居たたまれない気持ちになった私は、蒼甫先輩の目線から逃げるようにリビングを出た。
何も、あんな顔しなくてもいいのに──
急いで自分の部屋に戻り、そのままベッドに寝転ぶ。何も考えないように天井を仰ぎ見ると、またすぐに蒼甫先輩の顔を浮かび上がってきてしまった。