極上御曹司のイジワルな溺愛
蒼甫先輩の部屋は、階段を上がって私とは反対側にある一番手前。ノックをして蒼甫先輩に呼びかける。
「蒼甫先輩、片付け終わりました」
ちょっと嘘をついてしまった。
「椛か。入っていいぞ」
え?
まさかの返事に、心拍数が一気に上る。
入っていいぞって、私を部屋の中に呼び入れて一体何をするつもり?
妄想ばかりが先走り、動揺が止まらない。
それでも蒼甫先輩の部屋は気になるもので。「じゃあ、失礼します」とひと言ドアノブに手を掛け、ゆっくりドアを開いた。そこから顔だけ覗かせると、ソファーに座っている、蒼甫先輩と目が合った。
「何してるんだ、さっさと入れよ」
そう言われても、男性の部屋に入るのに、こんなにも落ち着かないと言うか気恥ずかし気持ちのなったのは初めてで。
以前男性と付き合っていたときに何度か部屋に入ったことはあるけれど、こんなにも鼓動が激しくなることはなかった。
やっぱり大した恋愛をしてこなかった証拠だと、今更ながらに後悔。