極上御曹司のイジワルな溺愛
「兄貴。だから、そんなんじゃないって言ってるだろ」
「そ、そうですよ。薫さん、変なこと言わないでくださいっ!!」
私は慌てて取り繕うが、蒼甫先輩は至って冷静で。薫さんにブツブツ文句を言いながら、次の料理の準備に取り掛かっていた。
私ひとりが取り乱していて、バカみたい……。
好きという気持ちは、やっぱり私の一方通行。もしかして蒼甫先輩も私のこと……なんて、ひとり勝手な想像も甚だしい。
でも薫さんはまだ何かを勘ぐっているのか、私と蒼甫先輩を交互に見てニヤニヤと笑っていた。
「兄貴、邪魔。夕飯できたら呼ぶから、あっち行ってろよ」
「えぇ~、僕だけ仲間はずれにするつもり? 椛ちゃんと、もっと話がしたいなあ」
薫さんはそう言って私を見ている。
そんな甘えた声で言われても、困るんだけど……。
でも無視するわけにもいかず「そうですね」なんて返事をすると、蒼甫先輩がそんな私の肩小突く。
「兄貴には気をつけろよ。あいつは、女なら見境ない」
そ、そうなんですか!?」
見境ないなんて初めて聞いた。そんなことないと思うんだけど。