極上御曹司のイジワルな溺愛

蒼甫先輩と薫さん、どっちの味方をするつもりもないんだけれど。

攻撃的な蒼甫先輩の目と、懇願するような薫さんの瞳。

ふたりの目に晒され戸惑っていると、「あぁ、もう!」とひと言発した蒼甫先輩が私を薫さんの手から引っ張り離した。

「悪かった。どっちの味方でもいいから、飯作るぞ。飯!」

「は、はい」

薫さんにペコリと一礼してから蒼甫先輩の隣に行き、先輩から渡されたレタスをボールの中にちぎり入れる。

「やれやれ。ホント、素直じゃないんだから」

素直じゃない? それって誰のこと?

薫さんの言葉に首を傾げる。

蒼甫先輩を見ても薫さんの声が聞こえていなかったのか、調理をする手を止めることはなく、ただ黙って鶏肉を切っている。

薫さんもいつの間にかいなくなってるし。一体なんなの、この兄弟。

「手が止まってる。ボーッとしてないで、さっさとやれ」

蒼甫先輩は手に持っていたお玉で私の頭をコンッと叩くと、目を細めて睨みつける。

「お玉で叩くなんて反則です! わかりましたよ、やればいいんでしょ、やれば」

ほんと今日は、踏んだり蹴ったりな一日だ。

後ろを向いている蒼甫先輩にあかんべをお見舞いしスッキリすると、ひとりレタスをちぎり始めた。



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