極上御曹司のイジワルな溺愛


矢嶌家で暮らすようになってから一週間。

スタッフルームで進行表をチェックしていた私はその手を止め、窓の外を見た。

空には灰色の雲が広がっていて、今にも雨が降り出しそうだ。でも幸いなことに、今日は珍しく結婚式の予定はひとつも入っていない。それだけが救いだった。

結婚式は、できることならば晴れの日で迎えたい。

特にガーデンウェディングや徒歩圏内にある神社での神前挙式の場合なんかは、雨が降ると予定を変更しないといけないこともしばしば。そういうこともあるかもしれないと前提はしてあっても、雨が降らないに越したことはない。

今日は平穏な一日になりそうだ。

安堵の溜息を漏らすと同時に、スタッフルームのドアが開く。

「どうしたの? 朝から浮かない顔して」

朝イチからのミーティングから戻ってきた麻奈美が、私の顔を覗き見る。

浮かない顔? そりゃあアンタ、こんな天気ならやる気がでないというもの。

でも浮かない顔の理由は、天気だけではなかった。

「失敗した」

「失敗? 何を?」

「目玉焼き。ちゃんと目玉にならないし、裏はまっ黒焦げだし」

「はあ? 一体、何の話よ?」

意味がわからないと言いながらも麻奈美は私の前の席に座ると、頬杖をつき興味深そうな顔を向けた。



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