極上御曹司のイジワルな溺愛
「お疲れ様です」
スタッフルームに入ると、真っ先に麻奈美を探す。今日は十時入りだと聞いていたが、どこかに行っているのか姿が見えない。
他にも何人かいるプランナーに声をかけ挨拶を済ませ、ロッカーに荷物を入れ今日使う資料を取り出した。
席は決まってないが、いつもの定位置をゲット。回る椅子に座り、ファイルを開く。
今日の打ち合わせの相手は、三十代の落ち着いたカップルと麻奈美から聞いている。
結婚式の日程と会場が決まりプランナーとの打ち合わせが何度かあった後、式の三ヶ月前くらいに私たちブライダルMCと打ち合わせをする。
ある程度の流れは決まっている段階だから、進行表を見ながらふたりのプロフィールの確認や、当日スピーチするゲストの名前や紹介の仕方などを話し合うのが今日の主な仕事だ。
「それにしても麻奈美ったら、どこ行ってんのよ」
打ち合わせの予約は午後二時。それなのに四時間も前の十一時に出社したのは、麻奈美に話を聞いてもらいたかったから。
突然家を追い出されることになったこの苦しい胸の内を、誰かにわかってほしい。じゃなきゃどうにも落ち着かなくて、打ち合わせに集中できない。