極上御曹司のイジワルな溺愛

隠すより現る?



「椛、そろそろ終わりにしない?」

麻奈美にそう言う声に顔を上げ、疲れた目で時計を見る。

「え? 嘘!? もうこんな時間?」

時計の針は二十二時をとうに過ぎていて、スタッフルームには私と麻奈美しかいない。

森さんと溝口さんのことを考えないようにしていたのが、仕事に没頭させたみたいだ。

「明日はMCも入ってるんでしょ? そろそろ切り上げたほうがよくない?」

「挙式披露宴は夕方からだけど打ち合わせもあるし、麻奈美の言うとおりにするかな」

とは言ったものの、この後どうするか。

蒼甫先輩、結局泊まりになったのか……。

この時間まで会社に顔を見せないってことは、多分そういうことだろう。

わかっていたことだけれど、なんとなく寂しい。しかもあの家に薫さんと二人っきり。危ないことはないと思ってたのに、蒼甫先輩が「気をつけるように」なんて言うから気になってしまう。

「麻奈美、夕飯どうする?」

やっぱり今夜は、麻奈美の家に泊めてもらうのがいいかもしれない。

よし! ラーメンでもおごってやるか。

デスクの上を片付け目を通しておきたい書類をカバンに詰め込みながら、そう思っていたのに……。

「誠と約束してるけど、椛も一緒に来る?」

と言われ、私の安直な考えは一瞬で打ち砕かれた。



< 134 / 285 >

この作品をシェア

pagetop