極上御曹司のイジワルな溺愛
それでも夕飯だけは一緒にと雅苑を出ると、黒塗りのハイヤーが目の前に停まった。
こんな時間に誰?
不審に思い足を止めると、ドアが開き中から出てきたのは……。
「椛? お前こんな時間まで、何してんの?」
「蒼甫先輩!? あ、すみません、副社長。お疲れ様です」
慌てて言い直し、頭を下げる。
「副社長とか、今更だろ。それにもう時間外だ、気にするな」
蒼甫先輩は笑ってそう言うけれど、麻奈美がいる手前そうもいかない。
でも──
もう今日は帰ってこないと思っていたからか、まさかの蒼甫先輩登場に浮かれ気分な自分がいる。
「良かったじゃない」
そんな私に気づいたのか麻奈美が肩をグイグイ小突き、小さな声で耳打ちする。
「な、何が良かったって言いたいのよ……」
ズバリ心を読み取られてしまった私は、口を尖らせそっぽを向いた。