極上御曹司のイジワルな溺愛
しびれを切らした私は麻奈美を探しに行こうと席を立つ、と同時にスタッフルームのドアが開いた。そこから顔を覗かせた麻奈美を見つけると一目散に駆け寄り、彼女の腕を掴んでスタッフルームから連れ去った。
「ちょ、ちょっと椛! どこいくのよ?」
「黙ってついてきて」
説明している暇はない。
途中自動販売機でペットボトルのお茶を二本買い、スタッフルームと同じフロアの一番奥にある普段は余り使うことのないフリースペースに麻奈美を座らせた。
「ここなら大丈夫」
私も麻奈美の隣に腰を下ろし、逃げられないよう彼女にピタッとくっつく。
「な、なによ……」
不審がる麻奈美に顔を近づけると、大きな溜息をつきガックリと肩を落とした。
「家を追い出されることになった」
「はあ!? どういうことよ、それ?」
「二世帯住宅にするらしい。妹の家族と暮らすから、ひとり暮らししろって」
二十九歳にもなって恥ずかしいが、さっきまで堪えていた涙がポロッと溢れそうだ。