極上御曹司のイジワルな溺愛

「それにしても蒼甫……」

マスターはそこで一度言葉を切り、私のことをチラッと見る。

ん? 今のは何?

不思議に思っていると、蒼甫先輩へと目線を戻したマスターが興味深そうに話し出す。

「ここは誰にも知られたくないとか言っていたお前が女性を連れてくるなんて、どういう風の吹き回しだ?」

そう言ってニヤリと笑ってみせるマスターとは対象的に、蒼甫先輩は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「そ、そうなんですか!?」

マスターその話、聞き捨てならないんですけど!

私にだってお気に入りの店の一つや二つはある。特に気持ちを落ち着けたいときやひとりになりたいときに行く店は、実は麻奈美にも教えてなかったりする。

でもそんな店にもし誰かを連れて行きたいと思う日が来るとすれば、それはきっと本当に好きな人ができたとき──だと思う。

だとしたら、蒼甫先輩ももしかして……。

自分の勝手な思いが、都合の良い方へ、気持ちがどんどん舞い上がっていく。



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