極上御曹司のイジワルな溺愛

二杯目のモヒートのグラスの中の氷がカランと音を鳴らしたのと同時に、それまで黙っていた蒼甫先輩がポツリと語りだす。

「……深い意味はない。お前だから、椛だから連れてきた。ただそれだけだ」

「へぇ、そういうことか」

蒼甫先輩の言葉の意味を理解したのか、マスターは納得と言うように頷く。

「え、えっと。それって……」

どう捉えたらいいの? 私が後輩だから? それとも……。

蒼甫先輩のハッキリしない態度に、モヤモヤが募っていく。

これじゃあ、生殺しだ。

グラスを持ったまま蒼甫先輩を見つめていると、そんな私を見てマスターが助け舟を出してくれた。

「蒼甫ってさ、職場のスタッフを大切にしたり連れや後輩の面倒見はいいけど、自分のことは二の次なんだよね。特
に女に関しては、な?」

「マ、マスター! 何を言って……っ」

慌てて席を立った蒼甫先輩はそう言いながらクルッと背中を見せると、低い声で「トイレ」と言ってその場から離れた。

「ちょっと喋りすぎたか。悪いことをしたな、はははっ」

なんてマスターは言っているが、その顔は少しも悪びれた様子もなく、今でも面白そうに笑っている。



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