極上御曹司のイジワルな溺愛

恋は仕勝ち?


「やっぱ、夜は少し冷えるな」

あと数日で十二月。コートだけでは、寒さを感じる。

「タクシー、拾わないとですね」

大通りへ駆け出そうとした、その時──

ヒールがアスファルトの溝に引っ掛かり、躓きそうになった私の腕を蒼甫先輩が掴む。

「あ、ありがとうございます」

派手に転ぶのを免れホッとしていると、掴まれている腕を引かれ、温かいものにすっぽりと包まれる。

「椛、酔ってるのか?」

甘い囁きと共に熱い吐息が耳朶をかすめれば、蒼甫先輩に抱きしめられているのだと気づく。

顔を上げると蒼甫先輩の熱い眼差しとぶつかり、胸がキュンと甘く疼いた。

「モヒート二杯くらいで酔いません。酔ってるのは、先輩のほうじゃないですか?」

蒼甫先輩に甘やかな瞳で見つめられると、どんどんと思考能力が鈍っていく。

こんなふうに、男の人に抱きしめられるのは初めてじゃない。それなのに、こんなにも胸が騒がしくなるなんて。

私、本当に、蒼甫先輩のことが大好きなんだ──



< 158 / 285 >

この作品をシェア

pagetop