極上御曹司のイジワルな溺愛
恋は仕勝ち?
「やっぱ、夜は少し冷えるな」
あと数日で十二月。コートだけでは、寒さを感じる。
「タクシー、拾わないとですね」
大通りへ駆け出そうとした、その時──
ヒールがアスファルトの溝に引っ掛かり、躓きそうになった私の腕を蒼甫先輩が掴む。
「あ、ありがとうございます」
派手に転ぶのを免れホッとしていると、掴まれている腕を引かれ、温かいものにすっぽりと包まれる。
「椛、酔ってるのか?」
甘い囁きと共に熱い吐息が耳朶をかすめれば、蒼甫先輩に抱きしめられているのだと気づく。
顔を上げると蒼甫先輩の熱い眼差しとぶつかり、胸がキュンと甘く疼いた。
「モヒート二杯くらいで酔いません。酔ってるのは、先輩のほうじゃないですか?」
蒼甫先輩に甘やかな瞳で見つめられると、どんどんと思考能力が鈍っていく。
こんなふうに、男の人に抱きしめられるのは初めてじゃない。それなのに、こんなにも胸が騒がしくなるなんて。
私、本当に、蒼甫先輩のことが大好きなんだ──