極上御曹司のイジワルな溺愛
心が痛い。
私の気持ちは蒼甫先輩だけに真っ直ぐ向いているというのに、彼の気持ちが全然わからない。
「どうして、こんなこと、するんですか?」
悲しいやら腹ただしいやら、目頭が熱くなって涙が溢れそうになってくる。
酔ってるから──なんて言われたら、きっとしばらく立ち直れない。
だから蒼甫先輩、お願い。私のことを好きだと言って……。
なんて。
私の中にこんな勝手な私がいたなんて、思ってもみなかった。
自分自身に呆れてしまって、もう笑うしかない。
「なんかひとりで勝手なこと考えてるところ、申し訳ないけど」
フッと笑った蒼甫先輩が私に顔を近づけると、無防備になっていた唇が重なる。それはほんの一瞬で離れ、蒼甫先輩の至極真面目な顔が私を見つめていた。
「先輩……」
「好きだ」
綺麗な形をした唇がゆっくり動くのを、ぼんやりと眺める。
蒼甫先輩、今、「好きだ」って言った?
ここ何分間の流れで考えれば、この“好き”は愛の告白なんだろうけれど。
まさかね。
「……何が好きなんですか?」
素っ頓狂な質問でもしてしまったのか、蒼甫先輩が呆れたように天を仰いだ。