極上御曹司のイジワルな溺愛
「この状態で、よくその質問ができるな。椛のその思考回路は理解不能だ」
そんなこと蒼甫先輩に言われなくたって、よくわかっている。自分がおかしなことを言ってるって。
いい歳してって笑われるかもしれないけれど、いい歳になってしまったからこそ不安がつきまとい、悪い方にばかり考えてしまう。
でも今日は──
蒼甫先輩のこと、信用してもいいですか?
力なくぶらりと下げていた両腕を上げると、ゆるりと蒼甫先輩の体に巻きつけた。
「先輩が言った好きっていうのは、私のことで間違ってないでしょうか?」
心臓が、バクバクと音を立てている。
「ああ、間違ってない。ずっと椛のことが好きだった」
私を抱きしめている蒼甫先輩の腕に力が込められると、苦しいくらい密着度が高まった。
もう寒さなど、少しも感じない。
蒼甫先輩の穏やかな鼓動を感じながら、ゆるりと顔を上げた。
「ずっと、ですか?」
蒼甫先輩と出会ってから、もう十年近く。その間、蒼甫先輩にも彼女が居たこともあってか、そんなこと感じたことがなかった。