極上御曹司のイジワルな溺愛

学生の頃も職場でも、いつも上からものを言う態度は変わらなくて。何故か私だけには厳しいから鬱陶しくと思うこともしばしばで、恋とか愛とかそういうたぐいのものは微塵も考えたことはない。

最近になって私は自分の気持ちに気づいたけれど、蒼甫先輩もずっと私のことがすきだったなんて……。

「先輩、嘘ついてません?」

脳裏に浮かんだ言葉が、まんま口から出てしまう。

「はあ? 嘘って、お前なぁ。三十にもなった男が、そんなことで嘘つくと思うか? それにだ、俺はいい加減なキスはしない」

自信満々にそう言い放つ蒼甫先輩を見て、私の眉がピクリと動く。

「いい加減なキスはしない。じゃあ聞きますけど、この前の不意打ちのキスは何だったんですか?」

「ああ、あれか……」

抱きしめていた腕を緩め、体を離した蒼甫先輩が私の手を引き歩き出す。

「帰りは歩きでいいか?」

「え? あ……はい」

雅苑まで大した距離はない。だから歩くのは全然構わないんだけど……。

キスのくだりはスルーですか?



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