極上御曹司のイジワルな溺愛
蒼甫先輩が一緒だったからか、モヒート二杯で珍しく酔っているのかもしれない。
少しふらつく足で、蒼甫先輩に引っ張られるようについていく。
「せ、せんぱい……」
「なあ、椛」
もう少しゆっくり歩いてとお願いしようとしたのに、それを蒼甫先輩が遮る。
「うるさい口を黙らせるだけのためにキスするやつが、この世の中にいると思うか?」
蒼甫先輩の言葉の意味が理解できない。
何をいまさら──
だってその“うるさい口を黙らせるキス”をしたのは、蒼甫先輩、あなたじゃないですか?
そう喉まで出かけて、それをやめた。
蒼甫先輩に何を言ったって、これっぽっちも勝てる気がしない。どうせうまく丸め込まれるのが、オチに決っている。
「さあ、どうなんでしょう」
こういうときは、とぼけるに限る。特に蒼甫先輩みたいな人には、理屈を言っても仕方がないことは学習済みだ。
歩くスピードが自然に少し落ちたことにホッとしながら、蒼甫先輩の次の言葉を待っていると、驚くような言葉を吐く。
「いるわけないだろ。お前はバカなのか?」
「バ、カ……」
どうして私がバカ呼ばわりされてるのか、サッパリわからない。