極上御曹司のイジワルな溺愛
笑う門には福きたる?
ひとつ目の挙式披露宴が無事に終えると、チャペラー(挙式担当者)に休憩することを伝え、すぐに蒼甫先輩のところへ向かう。
私が来ることがわかっていたかのタイミングで副社長室のドアが開き、蒼甫先輩が顔を出した。
「やっぱり来たな。披露宴はどうだった?」
そう言いながら蒼甫先輩は私を部屋に招き入れ、後手にドアを閉める。
「失敗しました……」
「失敗だと? どんな?」
蒼甫先輩の目が鋭く光り、私は慌てて手を横に振ってみせた。
「いえいえ、挙式披露宴はうまくいきましたよ。私を誰だと思ってるんですか? 失敗したのは、薫さんのことです」
反省しきりに項垂れると、この世の終わりかというように深い溜息を落とす。
「なんだ、そっちのことか。まあ、そんなに気にするな。兄貴も悪気があって言ったわけじゃないし、今頃言い過ぎたって反省してるさ」
「だといいんですけど」
副社長室のソファーに深く座り、蒼甫先輩を見上げる。
「っていうか、そんなことより……」
私の隣に腰を下ろした蒼甫先輩がゆっくりと近づいてきて、「そんなことより……」の意味を知った瞬間、彼の胸を両手で思い切り押し止めた。
「蒼甫先輩、ここ職場ですよ。こういうことをしに、来たわけじゃありません」
「こういうことって?」
わかってるくせに、普通そういうこと聞く?