極上御曹司のイジワルな溺愛
ジト目で蒼甫先輩を見ると、彼はガックリと肩を落としソファーに体を投げ出した。
「椛は真面目だなぁ。誰がいるわけじゃないし、ちょっとくらい甘えてもいいんじゃないか……」
不貞腐れる蒼甫先輩に、ちょっとくらいなら良かったかも……と思ったのは内緒。ここで甘い顔を見せたら、蒼甫先輩はきっと常習犯になってしまう。
「ちゃらんぽらんより真面目のほうがいいじゃないですか。それに私だって、蒼甫先輩に甘えたくないわけじゃないですよ。でも甘えるなら家に帰ってからで……」
「言ったな?」
「へ?」
「今晩たっぷり甘えさせてやる」
「い、いや、誰も今晩とは言ってないし……」
ボソッと口から漏れた言葉は、蒼甫先輩の「よっしゃー」の声にかき消されてしまった。
ま、いいか。
今晩そうなるかどうか──それはその時になってみないとわからないけれど、私だって好きな人には愛されたいし愛したい。
触れ合うことで相手への気持ちが、大きく深くなっていくと思っているから。
……って私、なに恥ずかしいことを。
ヨダレでも垂らしそうなだらしない顔をキュッと引き締めると、頬をパンッと叩く。
「そんなことより、蒼甫先輩。薫さん、どうしてますか?」
雅苑に来てから、まだ一度も顔を見ていない。