極上御曹司のイジワルな溺愛
今晩からは寝顔を見られないように、マスクをして寝ようかしら。
心な中ではそんなバカみたいなことを考えながら、蒼甫先輩を横目に通り過ぎる。
と──
ふわっと腕を取られ、あっと思う間もなく体を引き寄せられた。
パンプスを履いていた足はバランスを崩し、蒼甫先輩の体へとポフッと落ちる。いつも先輩から漂うグリーンシトラスの爽やかな香りが、私の中の恥ずかしさを癒やしへと変えていってくれる。
「なんだよ、椛。甘えたかったなら、はじめからそう言えばいいのに」
いつの間にか腰に回された蒼甫先輩の、手の動きが艶めかしい。ついその動きの気持ちよさに身を任せてしまいそうになって、先輩の右手を叩きグッと心を引き戻す。
「蒼甫先輩、この手は反則です」
「そうか? ここに椛の体があるから仕方ない」
良く言えば積極的、悪く言えば勝手。
この状態にしたのは蒼甫先輩なのに、何を言っても敵わないんだから……。
でも今は負けるわけにはいかない。
「そんな『ここにお菓子があるから食べちゃった』って言う、子供みたいなことしないでください。そろそろ次の挙式の準備に入らないといけないので」
まあ少し、ほんの少しだけ、離れるのは名残惜しいけれど──